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大阪地方裁判所 昭和50年(わ)574号 判決

本籍

韓国慶尚北道金陵郡牙浦面国土洞四二五番地

住居

大阪市阿倍野区北畠二丁目八番一四号

パチンコ遊技場等経営

金きみ子こと

金玉寿

一九二七年九月七日生

右の者に対する所得税法違反被告事件につき当裁判所は検察官藤本徹出席のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一〇月及び罰金一、二〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は大阪市阿倍野区阿倍野筋一丁目六番三号及び同市北区小深町四五番三号において、パチンコ遊技場「あべ鶴」を経営しているものであるが 自己の所得税を免れようと企て、

第一、昭和四六年分の所得金額が五六、二三一、二九二円で、これに対する所得税額が三〇、四三〇、二〇〇円であるのに、同遊技場の公表経理上売上げの一部を除外するほか、右遊技場は被告人の単独経営であるのに、金教鳳ほか一名との共同経営である旨仮装して、同遊技場の事業所得を三分するなどの行為により、右所得金額中四五、三三九、六五七円を秘匿したうえ、昭和四七年三月一五日大阪市阿倍野区三明町二丁目一〇番二九号所在阿倍野税務署において、同税務署長に対し、同年分の所得が一〇、八九一、六三五円で、これに対する所得税額が三、八八八、二〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により所得税二六、五四二、〇〇〇円を免れ、

第二、 昭和四七年分の所得金額は二四一、一二六、四八六円で、これに対する所得税額が五五、六八六、〇〇〇円であるのに、前同様の行為により右所得金額中三九、四一〇、六六四円を秘匿したうえ、昭和四八年三月一五日前記阿倍野税務署において、同税務署長に対し、同年分の所得金額が二〇一、七一五、八二二円で、これに対する所得税額が三三、〇八三、五〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により所得税二二、六〇二、五〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

第一回公判調書中の検察官請求証拠目録(一)記載請求番号1 至68、並びに同目録(二)記載請求番号1乃至6及び8乃至26と同一であるから、これを引用する。

(法律の適用)

被告人の判示各所為は、いずれも所得税法二三八条一項、一二〇条一項三号に該当するので情状により所定の懲役と罰金とを併科することとし、以上は刑法四五条前段の併合罪なので、懲役刑については同法四七条本文一〇条により犯情の重い判示第一の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で、罰金刑については、同法四八条二項、所得税法二三八条二項により判示の免れた所得税額を合算した金額の範囲内で、被告人を懲役一〇月及び罰金一、二〇〇万円に処し、刑法一八条により右罰金を完納することができないときは金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し、諸般の情状に鑑み、同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予することとする。

よつて主文のとおり判決する。

(裁判官 青野平)

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